約束の地カナンの前味

論壇:       約束の地カナンの前味       5/5/2019

創世記の構成は前半・後半と大きく二つに分かれ、それらはさらに二つに分かれて、全体で4部構成となっています

前半=1~25章

①1~11章=有史以前の前史:天地創造、堕落、洪水、バベルの塔。

②12~25章=アブラハム物語(75~175歳):召命、約束の地への旅、契約と割礼、ソドムとゴモラ、イサクの誕生、サラの死と埋葬(購入したカナンの地マクペラの墓地)、イサクとリベカの結婚、アブラハムの死、カナンで埋葬。

後半=25~50章:ヤコブ物語(誕生~147歳)

③25~36章=双子の誕生と争い、逃亡、伯父ラバン家で二人の姉妹と結婚、持参金が無いため14年間無給労働、11人の息子誕生、ラバン家から逃走、イスラエルと改名、兄エサウとの仲直り、最愛の妻ラケルの死とベニヤミン誕生。

④37~50章=ヨセフ物語(少年ヨセフの苦労と成長:17~110歳)

偏愛され傲慢に育った少年、兄たちの嫉妬、エジプトに奴隷として売られる、13年間の牢獄生活、王の夢を解いて総理大臣、7年の豊作と7年の飢饉、ヤコブ一家のエジプト移住、二人の息子マナセとエフライム誕生、ヤコブの遺言と死(故郷カナンで埋葬)、兄弟の和解(摂理信仰)、ヨセフの死とミイラ化、出エジプト時に遺骨同行、400年後カナンで埋葬

ここで強調されているのは、アブラハムの妻サラの埋葬地となったマクペラの墓所や、ヤコブが購入したシケムの墓所です。アブラハム、イサク、リベカ、レアが葬られ、ヤコブの遺骨もわざわざエジプトから運ばれてシケムの「嗣業の土地」に埋葬されました(ヨシュア記24:32)。

ユダヤ人にとって創世記は架空の神話ではなく、マクペラやシケムの墓地が神の約束と、自分たちの先祖の歴史を実証しているのです。現実の世界では約束の地カナンなのに、占領されたり捕囚になったりと、神の約束を疑いたくなるような出来事も起こります。創世記が描く族長たちの生涯は苦しみの連続でした。しかしどのような時でも、約束の地の前味であるマクペラの墓所が彼らの信仰を支えてくれました。

紀元4世紀のクリスチャンたちがこの地に巡礼している記録が残っています。それはこの地に古い教会があったからです。イスラム教でもこの地はアラビア語で「アブラハムの聖所」と呼ばれ、ヘロデ時代のものと言われる、高さ12mの石壁とミナレット(尖塔)が建っています。建物は十字軍(1167-1187年)時代のものと言われる遺跡が残っています。

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