出エジプトの歴史

論壇:         出エジプトの歴史        5/26/2019

神学校1年生時、古代イスラエル史最初の授業で学ぶのは「イスラエル史に大きな影響を与えた諸外国を歴史順に述べよ」です。これはまずエジプトから始まります。アブラハムもヤコブも飢饉のときにはナイル川の穀倉地帯に避難します。ヨセフはエジプトに奴隷として売られますが神様の導きで総理大臣になりイスラエル民族全体をエジプトに移住させます。

ヨセフを知らない王が登場してイスラエルを迫害しますと、神はモーセを立て出エジプトさせ、カナンの地に戻ります。このカナン地域はチグリス・ユーフラテス川流域に登場してくる東の大帝国(アッシリア、バビロン、ペルシャ)と、西のエジプトの覇権争いの戦場になります。さらに西のギリシャとの戦場になり、後にはローマとの戦いの前線になります。聖書はこの世の歴史を信仰によって解釈して記述しています。それでは、出エジプト記に描かれたモーセの記事は実際のエジプトの歴史の裏付けがあるのでしょうか。

エジプト第15、16王朝(BC17世紀~16世紀) : シリア・パレスチナからアジア系のヒクソスと呼ばれる民族がエジプトへ侵入し6人の王を立てます。ヨセフが総理大臣になれたのは、この民族に親近感を持った王(ファラオ)のためだという説明があります。しかし「あのヘブライ人の奴隷」(創世記39:14、17)や「羊飼いはエジプト人のいとうものであった」(46:34)という差別的な記述は、この解釈を困難にさせます。この事件の要点は、王の人種に関係なく、神の介入によって、奴隷が総理大臣になるというあり得ないことが起こったのです。

第17王朝 : 最後の王、イアフメス1世(在位1570-1546) : ヒクソスをエジプトから追放しエジプトを再統一。18王朝の基礎を築く。

第18王朝 : 第2代ファラオ、アメンホテプ1世(在位1551-1524)

カルナック神殿建設。カイロのエジプト考古学博物館にミイラあり。軍隊制度と官僚制度により新王朝の基礎を築く。

トトメス1世(在位1524-1518 or 1506-1493): 優秀な軍人。領土を拡張し、第18王朝最初の絶頂期を創出。

ハトシェプスト(在位BC1479-1458) : エジプト史唯一の女王。

トトメス1世の娘、トトメス2世の妻。トトメス3世が幼少のため共同統治王として20年にわたる在位中、絶対的権力によってエジプトを支配。

「ヨセフを知らない王」とは17、18王朝の誰かで、赤ん坊のモーセをナイル川から引き上げて養子にした王女は、王になる前のハトシェプストだとすると聖書の記述と符合し、出エジプトはBC15世紀となり、これは早期説と呼ばれます。後期説(13世紀)については別の機会に。

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