イスラエルの神と古代の神々

論壇:    イスラエルの神と古代の神々     3/29/2020
諸外国の歴史記述と照らし合わせ、歴史書として、客観的に年代を確定できるのはサムエル記からです。旧約聖書の歴史を学ぶことは聖書の背景を知るために大切なことです。年代を暗記することが歴史を学ぶことではありませんが、旧約聖書を学ぶためには最低限の歴史年表を覚えると良いでしょう。別紙に聖書の歴史年表を添付しますので、聖書にはさんでお使いください。小型版の聖書をお使いの方には、受付に縮小コピーを置いておきます。
神様がイスラエルを導いて来られたのは、侵略の心配がない孤立した大陸ではありませんでした。また古代文明が発生し、大帝国が興隆するチグリス・ユーフラテス川流域やナイル川流域ではありませんでした。約束の地カナンは古くから雑多な民族が入り乱れ、農業の神バアルが祀られる異教の国で、おまけにイスラエルが入植する時期を狙ったかのように、古代海洋民族ペリシテ族がエーゲ海からこの地に民族移動してきました。このペリシテという名前からパレスティナという地名が生じました。
パレスティナは地政学的には、東西の大帝国が相争う通り道の戦地です。イスラエルは、東のアッシリア帝国やバビロン、ペルシャ、西のエジプト大帝国が弱くなったり、侵略をとどまる時だけ自治を持つことができるというのが実情でした。大帝国の中心地を駅に例えるなら、それは特急や急行の止まる駅で、歴史を大きく動かす地です。パレスティナは各駅停車しか止まらない駅でした。しかしそんな立場であったがゆえに、大きな駅の雑踏に取り込まれないで、東と西の帝国の栄枯盛衰を客観的に観察することができたのでしょう。
古代世界ではどこででも自然宗教が発生し、農業神が共通に信仰されます。神様は見えない神を拝む宗教を、また偶像礼拝を禁じる宗教をパレスティナで始めようとされたのです。地政学的には弱い立場にある国なのに、イスラエルの宗教は国が滅びても存続したのです。聖書に登場する様々な宗教の神は、国が滅びると消滅してしまいました。聖書に登場する神々、バアル・ゼブブ、アッシュール、シン、ベル、アシュラ、アシタロテ、ネボ、ケモシ、ダゴン、タンムズ、リモンなどという宗教は現在存在しません。ギリシャ、ローマ神話の神々も今は風物詩だけになっています。人間の作ったそれらの宗教は国と運命を共にして滅びてしまいました。聖書の神だけが今に至るまで続いているのです。

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