論壇: 書評『はじめてのカルヴァン』(教文館) 1/24/2021
火曜日の読書会はコロナ禍でお休みですが、テキストの『使徒信条の学び』がもうすぐ終わりますので次のテキストを探していました。1年ほどで完了し、平易で読みやすく、基礎知識を与えてくれるものということで2007年発行のこの本を考えてみました。
カルヴァン(1509-1564)については今更説明する必要はないでしょう。人物についての評論も伝記もたくさん出版されています。キリスト教関係のみならず、「人類の知的遺産」「人と思想」シリーズなど、この世の出版社でも多く取り扱っています。
著者エルウッドは1960年誕生。ハーバード大学で神学博士号取得。現在はアメリカ長老教会の牧師で神学教授です。日本語訳は出村彰(1933年―)。こちらも高名な神学者で、内容を分かりやすく訳しています。
エルウッドはカルヴァンのジュネーブの宗教改革運動では、4つの道具が用いられたと述べます。①教理問答による教育、礼拝儀式の改革、教会統治機構の改革。②牧師養成機関である神学校を設立し牧師のレベルを引き上げる。③聖書解釈のために聖書の言語(ヘブライ語、ギリシャ語)に精通すること。④神学全体を包括した手引書を作ること(キリスト教綱要)。
この本の題名の原文は訳者によれば「安楽椅子に座った素人神学者向けのカルヴァン」、意訳すれば「寝ころがっても読めるカルヴァン」です。つまり我々のような素人神学者にも分かるカルヴァンの解説書というわけです。今まで多くのカルヴァン入門書を見ましたが、人物中心の伝記本が多く、カルヴァンの神学そのものを易しく解説したものは見かけませんでした。難しい問題を難しい言葉や専門用語で解説されても困ります。難しい問題を平易な言葉で解説できるのが本当に実力を持った人です。
カルヴァンを理解するためには解説書ではなく本人が書いたものを読むことが最も重要です。特に代表作『キリスト教綱要』4巻を読むことが必要で、神学生には必須の読本です。過去の東京教会では婦人会の読書会のテキストでした。しかし一般人にとっては分量的にも困難ですし、文体も取っつきやすいものではありません。
この本ではキリスト教教理の難問である三位一体、予定論、人間の自由意志と神の摂理を分かりやすく解説します。またカルヴァンが世界に与えた影響を「カルヴァンの子孫たち」の章で解説しますので、カルヴァン後の世界の神学の潮流が易しく解説されます。この本は出版元では絶版ですが、ネットで古本が手に入ります。