16.6%の賭け

論壇:          16.6%の賭け         9/15/2019

本日の説教テキストは、イスラエル12部族の代表12名がカナンの偵察に行った話です。カナンは現在のイスラエル、パレスティナで、神様がアブラハム以来イスラエルに告げて来られた約束の土地です。そこは乳と蜜の流れる地、実り豊かな豊穣の土地です。

しかし12人の偵察隊の内10人は占領不可能という評価を下します。そこの住民は強すぎるし、国土は頑丈な防壁で守られている。武器といえばこん棒くらいしか持たないイスラエルは戦争に勝てそうもない。これが偵察隊大部分の結論でした。それではどうしたら良いと言うのでしょうか。もうエジプトに引き返すしかありません。

イスラエルはこの2年間何を見てきたのでしょうか。出エジプト以来の神様の数々の奇跡。当時最大の帝国エジプト軍を滅ぼし、荒れ野でマナや大量のうずらを降らせ、岩から水を出してくださる方。しかし罰すべき者を決して赦さず、恐ろしい罰を与える方でした。それをイスラエルは自分の目で見てきたはずです。

「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」ということわざがあります。人間というものはつくづく忘れやすく恩知らずで、目先のことしか考えない、過去の教訓を今に生かすことのできない刹那的な動物です。

しかし私たちはイスラエルを悪く言うことはできません。2011年3/11の福島原発事故という恐ろしい体験をしたにもかかわらず、為政者はもう忘れてしまって目先の事しか考えません。これは人類の愚かさというものが決して廃れないということでしょう。

さて偵察そのものは賢い方法です。中国の孫子の兵法書に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があります。十分な調査と準備はこれからの侵略戦争に必要でした。しかしイスラエルは神様の存在を忘れてしまったところに罪がありました。この戦争は人間の欲によって始められた戦争ではなく、神様の約束に基づくものでした。しかし12人中2人だけが賛成した。つまり16、6%しか勝てない戦だと民は計算したのです。

現代の私たちはいかがでしょうか。16.6%の人しか賛成しない教会の計画などというものを強行するわけにはいきません。しかし「国の命令なので、これからは玄関に神棚を飾ります」(戦時中に実際にあった)という提案には、たとえ賛成者が85%いたとしても、私は牧師生命をかけて反対するでしょう。問題は勝てるかどうかではなく、自分の信仰の存続にかかわる問題だからです。

イスラエルはそれまで、未来の展望をもって自分を見つめるという訓練を受けたことがありませんでした。物事を有神的に、歴史的に考える訓練をこれから38年間かけて、教えられねばならなかったのです。

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