過越祭と詩編

論壇:        過越祭と詩編        11/7/2021

イエスは十字架にかけられる前の夜、弟子たちと過越祭の食事をされました。

過越祭とは出エジプトの事件を忘れないために制定された食事で、

「永遠に守らねばならない」と定められました(出エジプト記12:24)。

この食事のメインは酵母を入れないパンと羊と苦菜で、その儀式は下記の

プログラムに従って行われました。                

1、第1の杯が祝福の言葉を伴って回される。

2、エジプトの苦役を思い出すために苦菜が配られる。

3、種入れぬパン(マッツオート)、れんが色のスープ(カソーレト)、

焼いた子羊、他のいけにえの肉(カギーガー)が配られる。

4、家長が祝福して苦菜をスープに浸して食べ、一同も食べる。

5、第2の杯が注がれ、子ども又は最年少者が、この儀式の由来を質問し、

家長が過越祭の意義を教える(出エジプト12:26、27、13:8、14、15)。

6、「小ハレル」と呼ばれる詩編113、114編が詠唱され、賛美と祈祷の

後、第2の杯が飲み干される。

7、家長が手を洗い、パンを取って裂き、祝福して食べる。

8、一同が食事を始める。

9、家長が最後の子羊の肉切れを食べ終わると、第3の杯が回される。

10、最後に「大ハレル」と詩編115~118が詠唱され、第4の杯が回され、

  「ハレルの結び」である詩編120~134(都上りの歌)が詠唱される。

イエスはこの時の過越祭を「最後の晩餐」とされました。私たちは過越祭に代わる「主の晩餐」を「聖餐式」としてパンとワインで守っています。

「一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、賛美の祈りを唱えて」(マタイ26:26)は上記のプログラムの6のことです。また「一同は賛美の歌を歌ってから、オリーブ山へ出かけた」(26:30)とは「大ハレル」または「都上りの歌」のどれかでしょう。

このように詩編を歌うことはユダヤ人の日常生活に組み込まれていました。もちろん礼拝で用いられる詩編もたくさんありました。その初期の姿は歴代誌に見ることができます。ペリシテ人に奪われた神の箱帰還の儀式では詩編105、96編が歌われています(歴代誌上16章)から、これは礼拝の中で最も頻繁に歌われたものです。

讃美歌の「交読文」には詩編150編から33の詩が抜粋されて編集されています。これらは特に私たちの日常生活の中で用いられます。結婚式の時に歌われることでよく知られている交読文30は詩編127、128です。

当教会ではあまり詩編は歌いませんが、歌集の47頁以下は詩編歌です。

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