戦争の8月に思う

論壇:        戦争の8月に思う       8/21/2022

客員の蔡さんに「日本のクリスチャン人口は、なぜこんなに少ないのか」と質問されました。中国のクリスチャン人口はカトリックとプロテスタント合わせて20%とも言われます。中国政府は公認教会も非公認教会(家の教会)も迫害していますが、それはキリスト教の成長率が毎年7%にも上るので脅威を抱いているからです。2018年12月には「秋雨聖約教会」への弾圧で100人以上が拘束され、牧師は9年の懲役刑です。しかし皮肉なことに、迫害によってクリスチャン人口は増えています。これはローマ帝国時代もそうでした。「殉教者の血は教会の種」なのです。

韓国のクリスチャン人口は30%と言われます。しかし最近は若者の教会離れが多く高齢化しているとのことです。日本キリスト改革派教会の現役教師およそ130人の10%ほどが韓国人の正教師です。この傾向はこれからも増えていくでしょう。韓国のクリスチャン人口の著しい増加には別の理由があります。詳しくは立石文庫にある『南北朝鮮キリスト教史話』をお読みください。主な理由の一つは南北戦争です。1950年の韓国動乱によって朝鮮は南北に分断され家族も分断されました。このような悲劇が人の目を地上から天上に向けたのでしょう。

もう一つは言葉の問題です。日本で神と言えば八百万(やおよろず)の神々ですが、韓国では神にあたる言葉としてハナニムがあります。これは直訳すると「唯一様」となり、聖書の唯一の創造主がぴったり当てはまるのです。

もう一つは日本による植民地支配とキリスト教への迫害です。1938年、日本基督教会大会議長は朝鮮まで出かけて神社参拝を押し付け、多くの牧師が殉教しました。この時の抵抗によって、韓国のキリスト教は一般民衆の支持を受けたのです。あのとき日本は加害者、韓国は被害者だったのですから、その後のキリスト教の成長に違いが出るのは当然です。戦後日本キリスト教の多くは戦争責任を追及しませんでした。現在のクリスチャンが「日本教キリスト派」と揶揄されるのは完全な悔い改めをしなかったことにもよるのでしょう。

アメリカはキリスト教国なのでしょうか。保守系福音派教会が多い南部はサザン・バイブル・ベルトと呼ばれ、トランプの支持者が多いことで有名です。彼らはクリスチャンではなくアメリカ教徒なのだと指摘する識者が多いのです。「アメリカは神によって選ばれた国で、世界にこの価値観を広めていくのだ」という素朴な考えで、これがアメリカが世界各地に戦争を広げている理由の一つでもあります。彼らの信仰は現世主義でプラグマティズム(実用主義)だと言われます。

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