三つの聖霊降臨

論壇:       三つの聖霊降臨        7122020

祈祷会では使徒言行録を学んでいますが、11章まで通読しました。使徒言行録では最初にこの書を書く構想が述べられています。それは「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そしてエルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また地の果てに至るまで、わたしの証人となる」(1:8)。そしてこの順序、すなわち①エルサレムとユダヤ、②サマリア、③全世界、へと福音は聖霊の力で広がっていきます。

聖霊が降るという事件は、福音が三段階に広がっていく、その都度のきっかけとなって描かれます。最初の聖霊降臨はペンテコステの事件で2章に詳述されます。これは福音が全世界に広がることが「外国語を自由に話す」ペトロと仲間たちによって、象徴的に表されました。これは「エルサレムのペンテコステ」です。

2番目はサマリアです。ユダヤ人たちはサマリア人を同じユダヤ人とは評価せず、毛嫌いして交際していませんでした。そのような古くからある因習、タブー、民族対立は、人間の努力で直せるものではありません。だからこそ聖霊の特別な介入が必要です。8章では迫害のためにサマリアへ散らされていった人々がこの地で伝道し、サマリア人の上に聖霊が降ったことによって両民族の垣根が取り払われました。ペンテコステとは「50日目の」という意味ですが、聖霊降臨とむすびついてこの事件は「サマリアのペンテコステ」と呼ばれます。

3番目は異邦人への伝道、すなわち全世界への福音の広がりです。「ユダヤ人が外国人と交際したり、外国人を訪問したりすることは、律法で禁じられています」(10:28)という古くからあるタブーは人間の努力で解消できるものではありません。だからここでも聖霊の介入が必要となり、「神が清めた物を、清くないなどと、あなたは言ってはならない」(10:15)という神の強制的な命令が必要でした。そしてローマ人コルネリウスたちの上に聖霊が降りました。この事件は特別に重要なので聖書は66節も使って詳しく語ります。これは事件は起こった場所から、「カイザリアのペンテコステ」と呼ばれます。

このように使徒言行録は聖霊の働きが中心ですので、「聖霊行伝」とも呼ばれます。使徒12人の中で目立った働きが紹介されるのはペトロだけで、それも13章以降は登場しません。そのほかの使徒たちも名前が出るのはヤコブとヨハネだけで、12使徒ではないパウロの働きの方が2倍近く書かれます。これはパウロの手紙が新約聖書の3分の1近くの分量だということを考えれば納得できます。

pagetop