ヨブ記、2

論壇          ヨブ記、2        5/16/2021

ヨブのもとに来た3人の友人の最初はテマン人エリファズです。この人はエサウがカナン人の娘を娶ってできた息子の子供の名前です(創世記36:4、11)。テマンは「南」という意味でエドムの地域を表します。ここの住民は策略に長けた民族として警戒されていました(エレミヤ49:7)。従って「テマン人エリファズ」とは、ユダヤ人には「外国の賢人」という意味になります。

2番目はシュア人ビルダド。シュアはアブラハムの再婚の妻ケトラの生んだ6番目の息子で「東の方」に移住しました(創世記25:2、6)。ビルダドは「ベル(バビロンの神)は愛したもう」の意味ですから異教の知恵者ということになります。

ナアマ人ツオファル。ナアマは「楽しい」という意味で地域的にはエルサレム西方30kmのシュフェーラーなのか、アラビア北地なのか確定できません。ナアマはアンモン人でソロモンの妻の名でした。ツオファルは「さえずる小鳥」という意味ですから「陽気なおしゃべり男」という意味になるでしょうか。

4番目に登場する最年少のエリフはブズ出身でラム族バラクエルの子。ブズはアブラハムの弟ナホルとその妻ミルカ間に生まれた次男。ラムは「高められた」の意味でダビデの先祖にその名があります(ルツ4:19)。バラクエルは「神は祝したもう」、エリフは「彼は神と共にいます」という意味です。エリフはヨブを悪人と決めつけ「へりくだって神の懲らしめに服すよう」勧めます。

3人の友人の名前はよく知られた仰々しい名前ばかりですが、ヘブライ人ではなさそうです。この点から見ても、ヨブ記はフィクションか歴史的事実の記録かという議論は意味をなさないでしょう。この世のどんな知恵者でもヨブの苦しみの原因を説明できないのです。

神は最後に3人の友人に怒って言われます「お前たちは私について私の僕ヨブのように正しく語らなかった」。そしていけにえをささげてヨブに祈ってもらえと言われます。しかし神はエリフには何も語られません。エリフの語ったことは正しかったからでしょうか。それとも無視されたのでしょうか。このあたりも余韻を含む終わり方です。

ヨブと三人の議論はオリエント特有の回りくどい言い方ですから、何を言いたいのか分かりにくいのですが、勧善懲悪、因果応報などのオリエント的論理思考を拒否したところにヨブの主張がありそうです。

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