ダニエル書の夢と幻

論壇:       ダニエル書の夢と幻       9/5/2021

ダニエル書の困難さは夢と幻の解釈です。これは新バビロニア帝国 → メデイア・ペルシャ帝国 → ギリシャ帝国 → アレクサンドロス大王没後の分裂ギリシャ帝国 → ローマ帝国 → ? → 未来と続く各時代の、どれを指すのか特定できません。そもそもダニエル書は未来予言なのか、それともすでに起こった過去の出来事を「黙示的予言文学」という文学手法を用いて書いたものなのか、学者によって大きく解釈が分かれています。11章の「分裂後ギリシャ時代」があまりにも詳細に描かれていて、これは同時代の人にしか書けない。だから著者はBC2世紀の人でダニエルの名前を借りて編集したのだろうと言われます。ダニエル書の夢と幻のポピュラーな解釈を下記に記しておきます。

 

①巨大な像(2章):金の頭=バビロン、銀の胴体=メデイア・ペルシャ

青銅の腹=ギリシャ、鉄と粘土の足=ローマ、石=キリスト

②大きな木(4章)=ネブカドネツアル。傲慢のゆえに神に切り倒される。

③神の指によって壁に書かれた字(5章):バビロンが滅ぼされる。

④4頭の獣(7章):獅子=バビロン、熊=ペルシャ、豹=ギリシャ

第4の獣=ローマ、日の老いたる者=神、人の子=キリスト

⑤雄羊と雄山羊(8章):雄羊=メデイアとペルシャ、雄山羊=ギリシャ、

4本の角=4人の後継者

⑦終わりの幻(11、12章):第4の王=ダレイオス3世(11:2)、勇壮な王=アレクサンドロス(11:3)、南の王=プトレマイオス・ソーテール(11:5)、将軍=セレウコス(11:5)、南王の娘=ベルニケ(11:6)、芽=プトレマイオス・エーエルゲーテス(11:7)、南の王=プトレマイオス・フィロパトル(11:11)

憎むべき王=アンテイオコス4世(11:31)

アレクサンドロス没後のギリシャ帝国は4人の将軍(後継者=デイアドコイ)が分割しました。パレスティナはシリアのセレウコス王朝の支配下になったり、エジプトのプトレマイオス王朝の支配下になったりを繰り返し、ついにアンテイオコス4世・エピファネス(現神王、215~163年)のギリシャ化政策によって大弾圧を受けます。アンテイオコスはエルサレム神殿にゼウス像を運び入れてユダヤ人の反発を受け、これがマカバイ独立戦争に結びついていきました。

解釈困難な書ですがメッセージは明確です。特に7章では天地の支配者なる王「いと高き方」に反抗する恐ろしい姿の反対勢力は圧倒的に見えるし現実に迫害も増える。しかし国際情勢も個人の命も「日の老いたる者」が用意しておられる「人の子」によって最終支配へ導かれる。私たち神の民は「御国が来ますように」と祈り、神の王国の住民とされるのです。

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