キリスト誕生の時代背景

論壇:      キリスト誕生の時代背景     12/22/2019

世界の歴史はBC(紀元前=キリスト前)とAD(Anno Domini=主の年=紀元)に分かれます。キリストの誕生は紀元前6~4年頃ですが、なぜこの時だったのでしょうか。それは神様が御子を派遣するには、人類史上この時が最もふさわしいと考えられたからです。

歴史家ケアンズは『キリスト教全史』の「時満ちて」の章で下記のように言います。これに私の解説を加えて、「なぜあのときにキリストは生まれたのか」を考察します。

①、ローマの平和:古代世界は都市国家や部族に分れていて旅行を妨げ、思想の普及を阻んでいた。世界最大の領土を構築したローマ帝国最盛期には、ローマの道路によって世界の隅々にまで旅行ができた。ローマの直接支配の外側でも、経済的影響を及ぼしていた(今でもベトナムからローマの貨幣が出土する)。「十字架にかけられたナザレのイエスは復活した」というニュースはたちまち世界の隅々に達し、キリストの弟子たちは遠くインドにまでこの福音を伝えることができた。

②、ローマ帝国内でも周辺国でも、公用語であるギリシャ語が通用した。これはキリスト教の福音と教理が他の言語を介せずに、誤りなく伝わることに貢献した。

③、ローマの軍隊は地方民を占領先の地方で雇用した。これらの地方民はローマ文化と接触し、キリスト教に回心した兵士はそれぞれの服役した地域で福音を伝えた。

④、ローマによる世界統一は、逆に言うと地方の守り神がローマの守り神によって滅ぼされたことを意味する。諸民族は自分たちの神々に対する信仰を失い、あらゆる地方で宗教の霊的空白が生まれた。ローマの宗教は人間の欲望をそのまま反映した多神教であったから、人々の霊的ニードを満たさず、人々は普遍的な宗教を求めるようになった。

⑤、ユダヤ教のシナゴグは離散のユダヤ人(ディアスポラ)によって各地に建てられていた。使徒たちはこのシナゴグでユダヤ人たちに、旧約聖書のメシアはイエス・キリストだと証しした。

⑥、ローマ帝国内ではユダヤ教は公認宗教であった。ローマは最初ユダヤ教とキリスト教の区別ができなかったため、初期には妨害されず、福音はローマ帝国の広い範囲に宣べ伝えられた。

イスラムが始まった後にイエスが生まれたなら、その宣教は阻まれたでしょう。また現代に生まれたなら、そのニュースは現代の膨大な情報の一つに埋没してしまったでしょう。あの時代こそ、神様が準備されていた「時満ちた」時間でした。

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