「赦し」と「許し」 

論壇:          「赦し」と「許し」       10/4/2020

先日ある洋画を見ていましたら、家庭を捨てて放浪していた夫が帰ってきて妻と仲直りする場面で、翻訳の字幕では、夫「僕を許してくれるかい?」、妻「許します」というセリフになっていました。最近このように間違った翻訳をする洋画が多いです。これは「赦してくれるかい?」「赦します」でなければなりません。

聖書では悪を行った人をゆるすという場合は、漢字で必ず「赦す」が使われます。これは英語ではFORGIVE(赦免する)で、「許す」は「許可する」こと、相手の申し出などを認めることです。罪は赦されうるものであって、許されるものではありません。「赦す」は「恩赦」などの用法の通り、罪を軽減することまたは「赦免」することです。古くは八丈島などに流刑になった罪人を本土に帰すために遣わされる船を「御赦免船」と呼びました。

「許す」という漢字はPERMIT(許可する)で、赦すとは意味が全く異なります。「運転免許証」のように、その資格があるものに許可を与えることです。「許し」という漢字がクリスチャン信仰との関連で使われると、聖書の教えが歪曲、誤解されてしまいます。小さな漢字の違いですが、聖書の「赦す」とは、相手を罰したいという欲求を手放してすべてを神のみ手に委ねることです。

神様は私たちの罪を許す(許可する)はずはありません。本来ゆるされる資格がない私たちなのですが、キリストの十字架のゆえに、憐みをもって「赦し」てくださるのです。「赦す」とは、相手を罰したいという自分の欲求を手放して、すべてを神の御手に委ねることです。従って私たち人間同士の赦しは、神が私たちを赦してくださった神の「赦し」の上に初めて成り立つものです。「互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦して下さったように、あなたがたもそうしなさい」(コロサイ3:13)。イエスご自身は十字架の上でこう祈られました。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは何をしているのか知らないのです」(ルカ23:34)。

日本で「赦し」と「許し」の違いが理解されていないということは、キリスト教に根拠を持つ「赦し」の本当の意味が分からないからでしょう。研修館の英語辞書6版で確認しましたらforgiveの例文で「Forgive us our trespasses」(我らの罪を許したまえ)となっていました。現代の辞書ではいかがでしょうか。皆さんの辞書で確認してください。また「恩赦」は英語ではpardonでforgiveではありません。

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