サムエル記

論壇:        サムエル記上・下巻        2/4/2018

2016年4月3日の夕礼拝から始まったサムエル記の連続講解説教は本日の礼拝で終ります。夕礼拝は、8月は休みですし、連合会や特別礼拝などで休みになることがありますので、年30日くらいですが、約2年かかったわけです。

今日が最後の説教になりましたので、改めてサムエル記上下巻を音読で通読しました。上巻は31章51頁、下巻は24章44頁で、上巻の黙読時間は75分、下巻の黙読時間は65分でした。音読ですと3割増程度の時間を要するでしょう。全巻を一気に読みますと、今まで見えなかった「編集者の意図」も見えてきました。

サムエル記の中心人物はサムエル、サウル、ダビデですが、特にダビデ王を中心とした物語です。それならなぜ『ダビデ王一代記』と名付けられなかったのでしょうか。アレキサンドリヤでBC2世紀に出版された旧約聖書のギリシャ語訳は、サムエル記と列王記を合わせて『もろもろの王国α、β、γ、δ』と名付けています。サムエル記全体は、イスラエル王国の預言者たちによって宮廷内に保存されていた、多くの宮廷資料を用いて編集されたものなので、その預言者の筆頭であるサムエルの名が書名として採用されたのでしょう。イスラエルは神によって立てられた神制王国です。それは王と祭司の両輪によって走る戦車で、その御者は預言者でした。つまりサムエル記は預言者的価値観によって「歴史とイスラエルを導かれる神」を前面に押し出した「歴史書」なのです。

サムエル記の冒頭はサムエルの誕生と召命で幕を開けますが、それはイスラエル部族連合の中心聖所シロの神殿が崩れ落ちていく場面から始まります。神殿祭司エリの一家の堕落、神の箱が奪われ、帰還した箱はキルヤト・エアリムの仮設場に安置されます。そしてサムエル記の最後はエルサレム神殿の建設地を、エブス人アラウナ(オルナン)の麦打ち場をダビデが購入した場面で終ります。この土地にその後エルサレム神殿がソロモンによって建てられました。

「ソロモンはエルサレムのモリヤ山で主の神殿の建築を始めた。…ダビデがあらかじめ準備しておいた所で、かつてエブス人オルナンの麦打ち場があった」(歴代誌下3:1)。

サウル王は礼拝の回復を意図せずペリシテと戦って敗れていきます。ダビデは神礼拝を回復するために生涯をささげたのです。

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