黙示録が言いたいこと(続き)

論壇:     黙示録が言いたいこと(続き)    7/17/2022

黙示録には聖なる獣と悪い獣の両者が登場します。天上の礼拝風景を描写した4章の「四つの生き物」は獅子、牡牛、人間、鷲の合体したものでエゼキエル書1:5―10の聖獣を背景にしています。5章の「屠られた子羊」はキリストを、12章の「女」は教会を意味します。

6章に登場する赤、黒、青白い馬は災害を象徴しています。これら以外の動物はすべて悪者で、「竜」は別名蛇、悪魔、サタンです(12:3、9、20:2)。10章の「二匹の獣」、16章の「獣」はサタンの手下、「偽預言者」(19:20)は偽教師、偽メシアを意味します。

問題は「大淫婦」と呼ばれる女、その女が座っている「七つの丘」、「大バビロン」(16:19、17:5、18:2、10、21)が何を意味しているかです。「七つの丘」とはローマの別名ですが、黙示録では直接ローマという言葉は使いません。なぜならローマ帝国は歴史上繰り返し現れる大帝国の一つだからです。それらは傲慢、尊大、快楽。人をそそのかし、誘惑し、魅惑する文明です。結局人を神から引き離すものすべてです。ですから女は「紫と赤の豪奢な衣を着て、金と宝石と真珠で身を飾り…忌まわしい金の杯」を持っています(17:5)。この女が扱う商品のリストを見れば(18:12、13)、これらは巨大な産業、商業、文化、そして「肉の欲、目の欲、生活のおごり」(Ⅰヨハネの手紙2:16)であることが分かります。欲望が集中するのが都会です。そこは娯楽、快楽、虚栄、豪奢、思いやりのない人権無視がはびこるソドム、ゴモラです。

つまりサタンはあらゆる方法で、人間の罪を用いて神に逆らう人間を造り出そうとしているのです。最古の国はニムロドから始まりました(創世記10:8―12)。ニムロドとはマーラード(反逆する)に使役動詞の語幹「ニ」がくっついた語形で「反逆しよう」という意味です。王が「反逆しよう」というのですからこの相手は人間ではなく神なのです(拙著『旧約聖書の歴史』11、12頁)。

アッシリア、バビロン、ペルシャ、ギリシャ、ローマはいずれも偶像礼拝、快楽、虚栄、支配が最高度に具現されたサタンの王国だったのです。だから黙示録の言うバビロンとは「以前いて今はいないこの獣が、やがて来る」(17:8)。つまり歴史上繰り返し現れる、神に逆らう世俗の王国すべてを意味しています。

尤も「七人の王」「五人は既に倒れた」(17:9、10)とはエジプト、アッシリア、バビロニア、ペルシャ、ギリシャ、ローマ、イスラム、反キリストという解釈も、なかなか興味深いものがあります。

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