預言者

論壇:           預言者        8/16/2020

旧約聖書の重要な登場人物に預言者があります。これは世襲制の祭司とは異なり、神から直接召命されます。その働きは神から預かった言葉を民に告げることで、未来を予言するという意味ではありません。しかし神の言葉には「イスラエルはアシリアによって滅ぼされる」などの未来に起こる出来事の啓示もありました。預言者はこのような未来予言も含んで預言を語ったのです。

預言者には個人と集団の二種類があります。サムエルの時代、王国が成立する早い時代の集団預言者は「琴、太鼓、笛、竪琴を持った人々を先頭にして、聖なる高台から下って来る預言者の一団…。彼らは預言する状態になっています」(サムエル上10:5)というカナン土着のシャーマン的な要素が見られます。また宮廷で公務員として働く宮廷預言者の集団がありました。これらは王の顧問団のような働きをしました。

個人の預言者では、ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記に登場する預言者を「前の預言者」と言います。「後の預言者」はイザヤ、エレミヤ、エゼキエル、12人の小預言書(ホセア~マラキ)で、これらは「記述預言者」とも呼ばれます。

ダビデは戦争の時、神に作戦の指示を求めますと、神は事細かに託宣によって指示を与えます(サムエル記下5:17~25)。それほどまでに神とダビデは密接な関係でしたので「ダビデは預言者だった」とペトロは評価します(使徒言行録2:30)。神はダビデが罪を犯しますと預言者ナタンを遣わして罰を宣言します(サムエル記下12章)。

預言者には貧しい牧者アモスのような市井の人もあれば、貴族階級出身のイザヤのような人物もいます。なぜその人が選ばれたかは神の御心というほかありません。イスラエルは神の直接支配される神権政治の中にありましたから、預言者の役割は王や為政者に対する警告、戒めが中心となりました。エリヤ・エレミヤなどは王に対する「戦いの預言者」です。

旧約聖書には「預言者の仲間」と呼ばれる集団が、共同生活する様子も書かれています。これなどは現在の神学校のようなものです(列王記下6:1~7)。王国後期には預言者は正しい預言を語って迫害を受ける集団もありましたが(列王記上18:4)、400人にも膨れ上がった宮廷に仕える公務員預言者は、王に都合の良いことを語る堕落した偽預言者に容易になりました。(列王記下上22:5)。また重要な働きをする無名の預言者がたくさん登場しますが、なぜ無名なのか、名のある預言者との区別は分かりません。

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