民数記緒論

論壇:          民数記緒論         9/1/2019

本日から「民数記」を数回説教します。民数記の表題は原文では「荒野にて」ですが、70人訳聖書(旧約聖書のギリシャ誤訳)やラテン語訳聖書での表題は「数」ですので、日本語訳はこのようになりました。ちなみに英語訳聖書はNumbersと訳しました。数という名のとおり1~4章、26章は人口調査の話です。また部族を代表して誰が何を献げたかという詳細な記録が7章に出てきます。

民数記は下記のように大きく三部に分れます。

①シナイの荒野での出来事(1~10:10):人口調査(1~2章)、レビ人の聖別(3~4章)、指導者の献げ物(7章)、幕屋を覆う雲(9章)。

②シナイ→パランの荒野→モアブまでの出来事(10:11~22:1)

民の不満とうずら、ミリアムとアロンの反抗(11章)、12人のカナン偵察、偵察隊の報告に対する民の落胆と反逆、神の怒り、37年間の放浪(13~14章)、献げ物規定(15章)、コラたちの反逆(16章)、

アロンのエピソード(17章)、祭司とレビ人の規定(18~19章)、メリバでの水の争い、アロンの死(20章)

③モアブでの出来事(21~36章)

青銅の蛇、ヘシュボン、バシャンとの戦い(21章)、バラクとバラム(22~24章)、ペオルでの姦淫と偶像礼拝(25章)、カナン入国直前での人口調査(26章)、娘の後継者(27、36章)、モーセの後継者ヨシュア(27章)、献げ物規定(28~30章)、ミディアン戦と戦後処理(31章)、土地の分け方(32~35章)。

イスラエル12民族はBC722年の北王国滅亡で10部族が消滅しました。他国なら忘れ去られてしまったでしょう。しかし神の民であるユダヤ人たちは、自分たちのルーツをできるだけ詳細に保存することによって、歴史が「神の物語」(His story→History)であることを証ししました。

神学としては、民数記は神の真実と人間の罪のコントラストを描きます。民は約束の地へ導く神の約束を拒み、食物、水、荒野旅行、指導者、敵など事あるごとにつぶやき、神に逆らいました。

神は義なる方です。罰すべき者を罰し、モーセすらも約束の地から締め出し、40年の荒野旅行でイスラエルのほとんどは死に絶えました。この「神の義」と同時に「神の救い」「神の憐れみ」は、「青銅の蛇」による癒し(21章)、汚れを除き去る方法(19章)、神に近付くための献げ物規定の詳細などによって表わされています。

民数記は神の臨在の証拠としての雲、幕屋、また名簿、物語、礼拝規定などの古い伝承が、時系列にではなく、複雑に収集されています。

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