梁山泊のダビデ

論壇:     梁山泊(りょうざんぱく)のダビデ(説教補足資料)   6/21/2020
本日の説教題について「梁山泊って何ですか」とある方に質問されました。それで私とは違う世代の方が増えてきたのかなと思いました。梁山泊とは12世紀頃の中国、山東省で起こった宋江の反乱の史実を元に14世紀頃書かれた歴史伝奇小説『水滸伝』(水の畔の物語)の舞台となった沼で、現在は要塞を再現して観光地となっています。
『水滸伝』の時代は北宋末期、汚職官吏や不正がはびこる世の中。様々な事情で世間からはじき出された英雄ら36人(後に108人)が、宋江をリーダーとして集まり、大小の戦いを経て梁山泊と呼ばれる自然の要塞に集結し、悪徳官吏を倒すという通俗小説です。
これが日本に伝わると有志の巣窟を意味する代名詞となり、民衆の通俗小説「国定忠治物語」、「南総里見八犬伝」に影響を与えました。多くの出版社から全集(70巻)が出され、映画、テレビのシリーズ、漫画にもなりました。現代では「優れた人物たちが集まる場所」、「有志の集合場所」という意味になりました。従ってダビデと400人(後に600人)の郎党を梁山泊に例えると、ある日本の世代には直ちに理解できるというわけです。
強いリーダーの元へ不平分子、浪人などが集まるのはいつの時代でも同じです。リーダーの人格に魅かれて来る者もいたでしょうが、多くは食い詰め浪人です。損得勘定で集まるわけで、リーダーの持つ信仰によるのではありません。従って利益の分配で仲たがいが起こり分裂、消滅していきます(使徒言行録5:36、37参照)
ダビデたちはどうやって生計を立てていたのでしょうか。それは私設ガードマンとしてペリシテ人から農民を守ることによって(サムエル記上23:5)、また羊飼いたちを山賊から守る(25:16)ことによってでした。ダビデは分捕り物の公平な分配によって部下の信頼を得ます。また分捕り物の中から贈り物をユダの長老たちに献品することによって地歩を固めていきます(上30:23,26)。
ダビデは苦しい雌伏と下積みの時代に神への信仰を磨かれ、武力においても信仰においても熟練した戦士となり、ついにはイスラエル史上最高の人物と称され、メシアのひな型となります。しかしダビデは罪なき理想の人物だったのではありません。女好きですし、計算高く、また冷酷に敵を排除していきます。
アブラハム、モーセは神に忠実な人物の模範ですが、ダビデは見えない神を心の目で見て、真実に信じた点において最高の人物なのです。ダビデは神を愛したがゆえに称賛されているのではなく、罪があっても神が愛してくださったのです。それはダビデが心から神を喜んでいることを神はご存じだったからです。
「人のおもな目的は、神の栄光をあらわし、永遠に神を喜ぶことです」
(ウエストミンスター小教理問答:1)

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