占い師バラム

論壇:         占い師バラム        9/29/2019

本日の長い説教テキストは、昔から解釈困難な文章として有名な聖書個所です。話の内容は、イスラエルがバシャンの王オグをエドレイ(ガリラヤ湖東南約50km)で壊滅させたことを聞いたモアブ(死海東)の王バラクが恐怖に震え上がり、はるか800kmも彼方の地ペトルに住む有名な占い師バラムを雇ってイスラエルを呪わせようとしたことです。古代の人々は見える世界があると同様に見えない世界があることを固く信じていましたから、占い師やまじない師がはびこっていました。22~24章を要約すると下記のようになります。

1、バラク王はバラムを雇うために金銀を携えて家臣を派遣(第1回)

2、神はバラムが行くことも、イスラエルを呪うことも禁止され、バラムは要請を断る。

3、バラクは前回より高位の家臣を派遣(第2回)。バラムは金銀に魅かれて「もう一度神のお告げを聞く」と返事。神はバラムに「立って彼らと共に行くがよい」(22:20)と許可。

4、バラムが出発すると「神の怒りが燃え上が」り、御使いが妨害。

ろばが口をきく。その後御使いはバラムが行くことを許可。

5、バラムとバラクの会見。バラクはイスラエルを呪うよう要請。

神の託宣により、バラムはイスラエルを祝福「神が呪いをかけぬものに、どうして私が呪いをかけられよう」(託宣1、23:8)。

6、バラクは場所を変えて再度呪いを要請。バラムは祝福(託宣2)

7、バラクは場所を変えて再度呪いを要請。バラムは祝福(託宣3)

8、バラムの第4の託宣。バラクの滅亡とイスラエルの未来を預言。

「一つの星がヤコブから進み出る。一つの笏がイスラエルから立ち上がる」(24:17)← ダビデによって実現。

9、金銀をもらえなかったバラムはイスラエルを恨み、ミディアン人を用いて、イスラエルを偶像礼拝に引きずり込む(31:16)。イスラエルは「バラムを剣にかけて殺した」(31:8)。

この事件はイスラエルに苦い思い出となり、旧約聖書では繰り返し反省文として記録されます(申命記23:4、ネヘミヤ記13:1、ミカ6:5)。新約聖書でもペトロは「バラムは不義のもうけを好んだ」(Ⅱペトロ2:15)と警告します。黙示録ではバラムのような怪しい占い師を総称して「バラムの教え」と呼びます(黙示録2:14)

結局この話は、神が当時最も有名な異教の占い師を用いてイスラエルを祝福させてしまうという逆転話で、神がこの世は勿論のこと、霊の世界においても全能の方であることを強調したものでしょう。

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