出エジプト記説教の最後に

論壇:      出エジプト記説教の最後に      7/28/2019

出エジプト記25~31章(幕屋建設指示)は、35~40章とほとんど同じ言葉が繰り返されます。前者の「・・しなさい」が後者では「・・した」と変わっていますから、ちゃんと実行しましたという確認の強調かもしれません。この部分を除くと出エジプト記は、前半部分は十戒が与えられるまでのプロセスとモーセの活躍。後半は十戒と施行細則の詳細とこれにまつわるエピソード、と単純化できます。従って出エジプト記の主要部分は1~20章、32~34章ということになります。説教ではこれ以外の部分をほとんど省略しましので、各自でもう一度読んで補ってください。

本日の論壇では一つの重要な聖句を考察します。それは「あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない」という3度繰り返される言葉です(出エジプト記23:19、34:26、申命記14:21)。これは昔から解釈困難な聖句でした。料理法を教えたものだろうとか、「死と命を一緒にしていけない」という格言だとか、様々に解釈されてきました。

1929年、現在のシリア東海岸にあるラス・シャムラの古代遺跡をフランスの発掘隊が調査したところ、これは紀元前14世紀に栄えたウガリットの遺跡であることが分かりました。楔形文字で書かれた粘土板の詩文や宗教儀式の文章が多く発掘されました。その中に「子山羊をその母の乳で煮る」儀式の方法を教えた言葉があったのです。

研究の結果これは雨乞いの儀式であることが分かりました。つまり「自分の乳で子どもが料理される」という、こんな残酷なことをすれば母山羊は悲痛のあまり泣き叫ぶ。その泣き声が天の神々に届く。すると神々は悲しみのあまりもらい泣きする。つまり雨が降り出すというわけです。聖書はこのような異教の宗教行事を禁止したのです。

そういう目で聖書を見ますと、この文章が登場する文脈は礼拝規定を教えた個所です。出エジプト記23:14-19は祭、すなわち礼拝規定です。出エジプト記34:17-26も除酵祭の礼拝規定です。申命記14:21―26は礼拝の犠牲をささげる方法を教えています。従って「子山羊をその母の乳で煮て」雨ごいをする異教の儀式を、イスラエルは決して真似てはならないという厳しい戒めです。この申命記の言葉は新共同訳聖書では、清い動物と汚れた動物規定の最後に登場するように見えますが、聖書の原典には章や節はありません。これは13世紀になって便宜上作られたものですから無視してかまいません。

聖書で3回繰り返される命令は特別に厳しいもので、ここにも偶像礼拝を禁じる神様の御心が現わされています。

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