ヨナ書

論壇:          ヨナ書         2/14/2021

預言者ヨナ(鳩)の人物像については下記以外のことは何も分かりません。「ヤロブアムがサマリアで王となり、41年間王位にあった。彼は主の目に悪とされることを行い…罪を全く離れなかった。しかし…主がガト・ヘフェル出身のその僕、預言者アミタイの子ヨナを通して告げられた言葉のとおり、彼はレボ・ハマトからアラバの海までイスラエルの領域を回復した」(列王記下14:23~25)。

アッシリア帝国はBC12世紀頃から始まり、9世紀には残虐な大帝国と恐れられましたが8世紀になると衰退します。しかしテイグラテピレセル3世(744―727)の治世下急速に勢力を回復し、ついにイスラエルを滅ぼします(722)。つまりイスラエルのヤロブアム2世の治世時代(BC786―746年)はアッシリアが弱体していたため、イスラエルの黄金時代でした。ヨナ書では「アッシリアの王」と言わずに「ニネベの王」と呼んでいます。アッシリア首都ニネベ以外の場所では王の権力は弱体していたのです。

ヨナ書のテーマは①、過激なイスラエルの選民思想を否定し、神の慈悲が異邦人にも及ぶこと、これを理解できない狂信的なユダヤ人(代表がヨナ)を諫めることです。ヨナは預言者ですから、722年にイスラエルがアッシリアによって滅びることを予知していたのかもしれません。神の慈悲によってニネベの人が悔い改めて赦されることをヨナは拒否しました。

②、神が言ったことは必ず実現するという神不変の神学に対して、神ご自身が「考え直す」「変更する」という「神の可変性の神学」を教える。

③、とうごまの木の出来事によって、「どんなに強固に見える国でも瞬く間に衰退し滅びることがある」という歴史は、神の御心の中だけにあり、アッシリアにもイスラエルにも当てはまる。

ヨナ書はフィクションなのか歴史的事実なのかという議論は昔からあります。私としては「神は全能だから何でもできる」という安易な解釈はしたくありません。ヨナ書をヒントに書かれた「ピノキオ」物語がクジラの腹の中を詳しく描写するのに対して、ヨナ書では大きな魚の中の様子はヨナの祈り以外全く描かれません。ビーチに打ち上げられた大きな魚の中から吐き出されたヨナの異常な姿(恐らく髪も皮膚も脱色しており、数週間の療養が必要だったろう)が国内で大きなニュースになり、これがアッシリアまで報道されたからこそ、ニネベの人がヨナの宣教を聞く気になったのでしょう。またオリエント一帯で起こったBC763年の皆既日食、760年の大地震は多くの人に恐怖感を与えていたでしょう。

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