ペトロの手紙2、緒論

論壇:       ペトロの手紙2、緒論       9/16/2018

本日からペトロの手紙2を連続講解します。この手紙は3章だけの短いものですから、音読で10分、黙読で7分ほどです。どなたもまずは全体を通読してください。第1の手紙との違いは、6月3日の週報の論壇に緒論を書きましたので参考にしてください。

この手紙の特徴ですが、繰り返して使われる言葉に注目しましょう。「認識」「知識」「知る」「知っている」「承知している」「心得て」「知りもしない」「知って」。このような言葉が15回も使われています。

第1の手紙の特徴を一言で言うなら「希望」でしたが、第2の手紙は「知識」です。なぜこれらの言葉が多用されるのか。その理由は「偽教師」(2:1)の存在です。まだ完全な姿で現れてはいないのか、どのような人物なのか、組織なのか。学者によって様々な見解があります。

彼らはかつてクリスチャンになった者たちです。しかし「聖書の預言を…勝手に解釈」し(1:20)、「聖書を曲解し、自分の滅びを招いています」(3:16)。彼らは「みだらな楽しみ」(2:2)を教え、「欲が深く」「信者を食い物に」し(2:3)、「知りもしないことをそしり」(2:12)、「昼間から享楽にふけり」(2:13)、せっかく信者になった人を誘惑して元の自堕落な生活に誘い込みます(2:2)。彼らはキリストの再臨が遅いと文句を言い、「主が来るという約束はどうなったのだ。世の中のことは天地創造の初めから何一つ変わらない」(3:4))と信者の再臨信仰を脅かします。彼らによって教会の被害は甚大です。

パウロはエフェソでの遺言説教で「私が去った後に、残忍な狼があなたがたの所へ入り込んで群れを荒らし、…邪説を唱えて弟子たちを従わせようとする者が現れます」(使徒言行録20:29、30)と警告しました。

学者たちは、彼らは2世紀に登場してくる「グノーシス」主義の初期の姿だと説明しています。グノーシスとはギリシャ語で知識という意味です。グノーシス主義にはたくさんのバリエーションがあり、一言では説明出来ませんが、徹底した霊肉二元論で「物質は悪、霊は善」という考えを基礎とします。

全能者である神から、より劣った神々が「流失」して生まれ、その最末端に生まれた神「デミウルゴス」が世界を造った。だから物質、肉体は悪であると否定します。人間は「霊知」(グノーシス)を持つことによって物質を離れ、神に近づく。その先覚者がキリストであると説きます。これに対しヨハネは「キリストが肉となって来られたことを否定する者は…反キリストの霊だ」と警告しました(Ⅰヨハネ4:1-3)。

 

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