イエスの雛型としての旧約聖書の人物たち  

論壇:   イエスの雛型としての旧約聖書の人物たち  11/24/2019

創世記からヨシュア記にいたる、代表的人物を「神の救いの歴史」の観点から振り返ります。創世記1~11章は有史以前のお話ですから、12章から取り上げます。登場人物には一つの共通のパターンが描かれます。それは「低くされた受難者が高く挙げられる」というモチーフです。

アブラハムは信仰者の父(使徒言行録7:2)、神の愛する友(イザヤ41:8)と呼ばれます。100歳の時にイサクを生んだことは洗礼者ヨハネが老齢のザカリヤから生まれることの雛型です。アブラハムとは「多くの国民の父」という意味で、そのとおりアブラハムから空の星のように、海の砂のように多くの子孫が生まれました。ここから神の救いの歴史は始まります。75歳で故郷を離れて旅立ったアブラハムは、数々の苦難に遭うことによってその信仰が磨かれて行きます。

ヤコブはアブラハムの孫で、イスラエル(神と戦う者)という名前を与えられます(創世記32:29、35:10)。ヤコブからイスラエル12部族が生まれ、組織としてのイスラエルの骨格となります。兄弟の妬みを買った11番目の子供ヨセフはエジプトに奴隷として売られますが、神の奇跡によって総理大臣になったことから、イスラエル一族は飢饉で歴史から消滅することなく、エジプトで大きな民族となります。「神が私をあなたたちより先に遣わしになったのは…大いなる救いに至らせるため」(創世記45:7)は、ヨセフ物語のクライマックスに表明される神の摂理への信仰告白です。またヤコブは遺言で、メシア(救い主)が四男ユダの家系から生まれることを預言します(創世記49:10)。

ヨセフのことを知らない王がイスラエルを迫害すると(出エジプト記1:8)、モーセがリーダーとなって出エジプトし、約束の地カナンを目指します。モーセは王、預言者、祭司の三役を兼ねた唯一の人物で、新約時代になって登場するイエス・キリストの雛型となります。モーセは大変な苦労をしますが、これもイエス・キリストの受難の先取りです。

モーセの従者ホシェア(救い)はヨシュア(神は救う)と改名し(民数記13:16)、モーセに継ぐ最高司令官になります。ヨシュアのギリシャ語読みがイエスです。ヨシュアは110歳になるまで戦いの連続でしたが「あなたは年を重ねて老人となったが、占領すべき土地はまだたくさん残っている」と神様は叱咤激励されます(ヨシュア記13:1)。

ヨシュアは最後の説教で「あなたたちは主に仕えることができないであろう」と預言しますが、これはイエスがペトロに言った「あなたは今夜、鶏が鳴く前に三度私のことを知らないと言うだろう」(マタイ26:34)というため息のような遺言を思い出させます。

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